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大学院で学ぶ人のためのアドバイスと体験談

time 2023/09/02

大学院で学ぶ人のためのアドバイスと体験談

夏は院試の季節です。大学院に行こうか迷っている人の参考になればと思い、薬学部、工学部、医学部の研究室を渡り歩いた私の大学院に関する持論と体験談を記します。『大学の研究室』の光と闇について語ります

薬学部に関しては6年制になったので4年制だった当時とは少し事情が違いますが6年間薬学部にいる意義と、博士まで行く人の参考になれば幸いです

プロフィールを見ていただければ分かるように、私はいわゆる

挫折、落ちこぼれ組です

今となっては満足と後悔 50:50です

大学院で得たもの

「客観的視点」「苦楽を共にした友人、恩師」「出力すること」

失ったモノ

「お金、時間、夢、🤘(人指し指除く)😅




失う:お金

学費と生活費はどのくらいかかるだろう?お金の問題は避けては通れません。

自分の場合は私立の薬学部だっため、サラリーマンの父、専業主婦の母には苦労をかけました。

生涯かかった学費の概算

大学:私立薬学部(4年間)800〜900万

大学院:私立薬学部(修士2年間)300万

大学院:国立工学部(博士3年間)150万

大学院:国立大学医学部(研究生論文博士)270万

さらに生活費ともなると家賃含め年間150〜300万かかります。

収入源は無利子の奨学金(という名のローン)とTA(ティーチングアシスタント)、夜中のドラッグストアのバイトなどで、なんとかなりましたが、何百万という借金を抱える覚悟は必要です

学振(返済不要)の奨学金をもらっている人も中にはいましたが、ごく稀でした。

大学ネームバリュー、教授の力も影響すると言われていました

当然ですが手続き、審査のハードルが高いです

ただ、勇気を持って教授に

「私は学振もらえるレベルですか?」

と、確認するのもいいと思います

意外にももらってる人もいました

もらえれば別格の院生になれます

「あの人、学振もらってるらしいよ」

「流石だわぁ〜」

と言う噂がたちます。

履歴書にも書けるほどの名誉で、卒業後の進路も引く手数多(あまた)でしょう

失う:時間

大学院に進学するということは社会人になるのが2年、博士課程に進めば更に最低3年遅れます。

働く時間を失うということは同時にお金も失うことになります。

働いている同期の金の葬(はぶ)りは良くなります。

素敵な車に乗る者、素敵な服、時計、鞄を着飾る同年代が目につくようになります。少し惨めな思いをするかもしれません

地元の友達もバリバリ働いています。

「大学院て何?」と言われて説明することも多々あります

ただ、どんなに詳しく説明しても「ふーん、研究してる凄いとこなんだー」という印象しか残らないかもしれません

大学院で勉強している期間は収入がほぼ無いので働いている人たちとの年収は大きく差が開きます

卒業後の年収が院卒として優位な職につかないと生涯年収は大きな差となります

仮にポスドクで研究者としての実績を積んでも年収300−600万くらいで所詮は契約社員です。パートナーと結婚に踏み切る勇気は出てきません

甥っ子、姪っ子にお年玉をあげるか迷います

他の親戚との金額の差に惨めな思いをすることがあります😢

失う:🤘(人指し指除く)

学部時代にできたパートナーは就職し、自分は学生という格差が生まれます

中には学生結婚してしまう人もいますが

一般的には卒業(学位取得)まで待たせることになります

相手のメンタルケアも必要です

周りが結婚してくると焦りを感じるものです

これができないと失います😢

20代という人生の大切な時間を身分の格差に耐えながら進む覚悟が必要です

失う:夢

大学院に入る前に必ず目にするのが研究室の先輩の活躍です

海外の研究室を行き来している先輩はキラキラして見えます

憧れやメンターがいることはいいことですが、実力が追いつかないと結果的に悲しいことになります

研究者の栄光の一つ、特許の取得を夢みることにもなるでしょう

稀にテレビなどで大学院生が特許を取得してるニュースを目にしますが、実際には企業との共同研究が多く、研究費やパワーバランスの関係上、学生が特許を取れることはほぼありません

結果、馬車馬の様に働いただけとなります

自分の研究テーマの価値、立ち位置、研究費の出所を確認しておくことが重要です




得たモノ

ここまで記した失ったモノは多かったですが、それにより得た、代え難いものもあります

得た:客観的視点

大学院では研究データとの戦いの日々です

検出したデータの妥当性をとことん考えなければなりません

わかりやすい(?)例を挙げます

小惑星リュウグウから石を持ち帰ったハヤブサ2について考えてみます

リュウグウから石を持ち帰る目的の一つとして生命誕生の起源に繋がるアミノ酸の存在を確かめることがあります

当然、採取に使用する機器全てに地球上のアミノ酸が付着していない状態を作らなくてはなりません(空気中に浮遊してますから)

研究室に持ち帰った後もコンタミネーション(実験汚染)を起こさない様に手順をしっかりと計画しなくてはなりません

探査機の製造から打ち上げ、飛行、帰還、研究室までの移動、開封までに起こりうる全ての状況を予測し、説明できなくては簡単に足元をすくわれて台無しになってしまいます

参考文献の重要性

人類史上初めての研究でも同様の研究は必ずあり、これまで培ってきた先人の知恵を一つ一つ融合させて初めて新しい成果を得られます

自分の研究が科学全体のどこに位置し、人類にどの様な利益をもたらすかを説明するには客観的な視点が必要です

「本当にそれはリュウグウの石なの?」

という質問に科学的に説明しなくてはなりません

「ニュースで見た写真と一緒でしょ」

「JAXAがそう言ってるので」

ではダメなのです

また、得られたデータとブランク(空実験)との比較が統計的に正しいか説明しなくてはなりません

実験を進めていく上で

「自分にとって都合がいいデータ」

が欲しくなることがあります。ただ実際はそのようなデータを得られないことが多いです

その結果を考察するために他の論文(参考文献)を引用して自分の研究を客観的に説明しなくてはならないのです

しかし、しばしば参考文献が間違っていることがあります。これにハマると自分の研究を根底から否定されてしまうことになるので参考文献には十分注意しましょう

先人を疑う力も必要です

そんな作業を日々進めていくと徐々に私生活での出来事も客観視できる様になります

テレビの情報番組を見ているとバカバカしくなったり、発信側の怠慢が見えてイライラします

そんな理屈っぽい人間になるのはあまりよくありません

世の中のほとんどの人が主観的、感情的に物事を見て判断し、暮らしています

その様な人々は科学的根拠があっても科学自体が理解できないため

何を言ってもダメでしょう

「星占いが当たるかは科学的に証明されてない」

と言っても

「星占いが当たらないことも科学的に証明されていない」

と言われるのがオチです

人の性格や行動を客観的に数値化するのは難しいということを学ぶことができます

目に見えない宗教的なモノを信じ切っている人を科学的根拠に基づいて説得することは容易なことではありません

そもそも科学がわからないので、虚物を信じざるをえないことを理解してあげましょう

そして、理屈っぽい人間は嫌われます

前述した通り、人間の考え方はそもそも主観的だからです

少数派になり惨めな思いをしないためにもある程度、世渡り上手になりることも重要です

ちなみに、アインシュタインのような偉人達はコミュ障が多かったようです

あまりに長くなってしまったので

連載します

次回以降のネタ👇

・苦楽を共にする生活・・・夜中に窒素を汲みに行く

・私がみてきた大学院生・・・成功者と落ちこぼれ

・追い込まれる留学生のデータ改ざん・・・オーバードクターできないプレッシャー

・運・・・大学院で幸運を掴める人とは

・意思あるところに道はある・・・捨てる神あれば拾う神あり

・研究室の崩壊・・・見捨てられた院生

・研究室のお金事情、将来性・・・研究室によって使い捨て、洗って再利用

・出力することの意味・・・頭でっかちな自分